嗅神経性嗅覚障害とは嗅神経細胞そのものがダメージを受けて嗅覚が低下することをいう。風邪やインフルエンザのウイルスが同細胞を攻撃することで発症する。新型コロナウイルスの影響で起こる嗅覚障害のメカニズムは、まだ詳細が解明されていないが、症状が長引くケースはこのタイプだと考えられている。
金沢医科大学耳鼻咽喉科の三輪高喜主任教授は、治療として漢方薬の当帰芍薬散などを処方するほか、嗅覚トレーニングを指導している。「嗅神経細胞は死滅しても再生する。積極的ににおいを嗅ぐ行為は再生を活性化させる」
においは何でもよいが、コーヒー豆やスパイスの効いた料理、入浴剤、整髪料など複数のものを意識して嗅ごう。三輪主任教授は「まずは朝晩1分を目安に4種類のにおいを15秒ずつ嗅ぐ習慣をつけてほしい」とすすめる。
中枢性嗅覚障害は脳挫傷などの頭部のケガや脳の病気が原因で、においの情報を脳が受け取れなくなった状態だ。「アルツハイマー病やパーキンソン病の初期症状としても表れやすい。嗅覚障害がこれらの病気の早期発見に役立つと期待されている」と三輪主任教授。嗅覚トレーニングは外傷後の嗅覚障害の改善にも有効だという。
日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD13EE30T10C22A5000000/